『忘れられた罪の島』(エドガー・G・ウルマー)

Isle of Forgotten Sins(Monsoon)/US

孤島の売春宿という初めの舞台からしてすでに妖しげな空気がぷんぷんしているのだった。そのマダムに言い寄る男。マダムが慕う潜水夫(ジョン・キャラダイン)は溺死したといって、強引に結婚を迫る。そこに死んだはずの潜水夫が登場し、ふたりは殴り合うのだが、このけんかシーンの激しさったらない。けんかに勝ったジョン・キャラダインをガハハ笑いのおっさんが祝福し、酒をおごる。キャラダインはガハハ笑いの男の名前をマダムに聞くと、ぶちのめした船主を起こして2階へ。沈んだ300万ドルの金塊を探す計画を打ち明ける。さきほどの男は金塊を積んで沈んだ舟の船長なのだという…。島の売春婦たち(中には客を拳銃で撃った怪しげな美女もいる)も乗り合わせいざ金塊探しに出発!という具合に登場人物のおのおのがきわめてせつな的なモチベーションで好き放題動いている。こんなにいいかげんなシナリオがあっていいのか。黒沢清はこれこそが本来の映画だったのだというが、確かに映画はすこぶる面白いのだった。最後に巨大なモンスーンが登場人物を襲い、すべてを洗い流してしまう。特撮はなかなかよくできていて、この場面を打ち出すため再上映タイトルは「モンスーン」に変えられた。終わってみれば確かにモンスーンのように気まぐれではげしい映画なのだった。