Botan Doro/JP
これはすごい。傑作。ギミックと運動で見せる
中川信夫と対照的に山本はあくまでも正調ホラーとしてのムードとストーリーでぐいぐいと引き込んでいく。恐怖演出におけるワイヤーと照明、効果的な編集も見事。「恐怖映画」としてはもしかしたら中川の映画よりよっぽど通用するかも。幽霊とわかっていながらお露との逢瀬に引きずられていく主人公の人物造形もいいし、お露を演じる赤座のかれんさも不憫さも胸をうつ。お露の過去を見世物的に描写するシーンもなく、あくまで語りとして処理するのも上品だ。
西村晃、
小川真由美、
志村喬など脇役の演技も出色。お露の骸骨をかたわらに抱き、息絶えた新三郎…
シェークスピア悲劇のように美しく切ない幕切れ。アントニオ・マルゲリーティの『幽霊屋敷の蛇淫』をほうふつとさせ、おそろしくも胸をうつ。