『捕らわれの町』(ロバート・ワイズ)

The Captive City/US

フィルム・ノワールDVDBOX Vol.3より。猛スピードで突っ切る自動車のロングショットから、車内でただならぬ表情をした夫婦の表情へ。警察署に駆け込み、保護を依頼するまでの畳み掛けるような展開で一気に引き込む。男は地方紙の編集長。街全体にはびこる賭博犯罪の実態をつかんだものの、さまざまな人たちから圧力を受け、ついに命の危険にさらされていた。万が一に備えてレコーダーに証言を吹き込む冒頭部から、フラッシュバック形式で見せていく。テンポがよく、それでいて意外性もある絶妙なカット繫ぎは編集出身のワイズの真骨頂だろうか。轢殺される第一の被害者の顔アップからクラブのトランペットの超クローズアップにつなぐ編集の妙。第二の被害者も死体そのものは映さず発見者の悲鳴と表情だけで恐怖感をあおるなど「見せない」演出が冴える。一方でカメラマンの少年が暴行される場面の生々しさもインパクトがある。徐々に孤立していく主人公の心理描写もいい。広角レンズとロケ撮影によるドキュメントタッチの演出もかっこいい。当時の政治家が登場し、観客に向かって組織犯罪撲滅を訴えるラストで一気に現実に引き戻されるのだった。その優等生ぶりが興を削ぐ面はなきにしもあらずだが、本作の魅力をおとしめるものではないだろう。